クレジットカードに関する、ある一団の一幕

Xコーポレーションの社員たちは、退社後にレストランでの会話を楽しむことを日課としていた。はじめは上司や家族の愚痴を言い合ったり、仕事の打ち合わせをしたりする程度だったが、今ではもうひとつの目的ができていた。クレジットカードについての情報交換である。
「では、Aくんから発表を頼む」
同僚に促され、Aはファイルに入った書類を取り出して目を通した。咳払いをして、仰々しく発表する。なかば面白がって、重々しい話し方をしているのだ。
「私の研究によりますと、クレジットカード市場は3つのニーズに沿って役割を分けつつあると言えます。一つは、お得さです。ポイントが貯まりやすい、特定の日に使うことで割引を受けられるなどですね。二つ目は、コンシェルジュ、すなわちユーザーサポートです。デスクに電話をかけることで、ホテルやゴルフ場の予約を行えるというものです。そしてもう一つは、ステータスの高さでしょうか」
Aの言葉を聞き、一同は息を呑んだ。ステータスが高いクレジットカードといえば、部長が持っているプラチナである。本人不在ではあるが、そのようなステータスの象徴を持つ人物が身近にいるというだけで、身が引き締まる思いがする。
「しかし、我々としては前者、つまりお得さを重視したいところだが……どこのクレジットカードがいいと思う?」
Bが言った。Aは少し考え込んでから、返事をした。
「そうですね、やはりポイントの還元率が一番でしょうか。今では1%以上の還元率かつ年会費無料というカードは当たり前ですから。ただ、ポイントの使いやすさにも留意したいところです。いくらポイントが貯まったところで、使う機会が少なければ宝の持ち腐れですから……」
「ふうむ。すると、やはりあれかねえ」
「そうです、これですね」
Aはクレジットカードを財布から取り出した。すると、Bのほか、その場に居合わせたほかの三人までもが、同じものを出して高く掲げたのである。
「それで、今日は誰が払うんだ? 良ければ私が」
Bが言うと、Aは反論した。
「いえ、今日は私にお任せください」
「なんだ君、ポイントを貯めたいだけじゃないのか!」
「いえいえ、私は皆さんのお役に立ちたいだけでして……」
結局、もっとも重要なのは、誰が支払ってポイントを貯めるかという点であった。

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